朝日新聞デジタル・2023年6月23日に、気になる記事がありました。
どうも最近「有識者会議」という言葉が出ると、鬼太郎の妖怪アンテナばりに警戒アンテナがピピッと立つ体質になってしまったのですが(笑)、サイバー攻撃への対策は非常に重要であると考えつつ、懸念の一番大きな要因は「憲法21条」との兼ね合いです。
日本国憲法第21条
1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
報じられている案は、当然これの2.に抵触すると思われます。憲法の「権力の暴走を防ぐ」という機能の中でも、かなり重要な条項の一つですね。
ここで「誘拐事件の捜査などで通信を傍受することがあるよな?」と思って調べると、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」で規定されているのですね。国内でサイバー攻撃などの犯罪が発生した場合の対処については、すでにこれでカバーされていると思われます。
一方、法改正案の趣旨は、加害者となる可能性があると政府が判断した者の通信を〝平時〟から監視し、未然に阻止するという、かなり踏み込んだものになるようです。
今回の記事を読んで、私が感じた疑問および懸念は大きく2つ。
●重大なサイバー攻撃の大半は「海外」からのものではないか?
例えサイバー攻撃を目論む者が日本国内にいたとしても、正々堂々と国内のサーバーから攻撃を行う純粋まっすぐ君はいないでしょう(笑)まず間違いなく、海外からの攻撃という形に工作するはずです。
そして、今回の記事中でも
>また、通信や電力、金融などの重要インフラや政府機関を狙ったサイバー攻撃を防ぐため、海外のサーバーなどに侵入し、相手のサイバー活動を監視・無害化するため自衛隊法を改正するかどうかも検討する。
こうした記述があり、国防の観点からはこちらのほうがはるかに優先度が高いはずなのに、なぜ国内での制限の方が主題として出てくるのか?
●「通信」が介在する範囲の拡大
現代は、ごくプライベートな行為にも、様々な「通信」が介在しています。
例えば私は普段、よしりん先生も愛用の「Evernote」というメモアプリで原稿を書いています。Evernoteでは、記入しているテキストや画像などのデータが、常に「通信」でサーバに記録されており、そのおかげで複数のパソコンやスマホでも常に同じ内容が保たれたり、居眠りの間に全部消えてしまっても(笑)サーバ上の記録から復活させることができるんですね。とーっても便利です。
従来、「通信」は他者とのやりとりが主でしたが、現在はこのような「自分用のメモ」でさえ、「通信」をはさんだ形で行われる局面が多数存在します。
さて、
人間が「内心」で何かを考える事それ自体は、他人がそれを侵すことはできません。
では、内心で思った事を紙に書く事は?
犯罪の被疑者になった場合などを除けば、他人のメモを勝手に読んで「なんだ貴様、こんな事を考えているのか!」なんて事は許されませんね。メモは「内心の延長線上」にあるものと言えるでしょう。
それを考えると、通信を介してクラウド上に記録される電子的なメモも、同じく侵してはならない「内心の延長線上」になるのではないか?
現実的には、オンラインサービスを利用する時点で「第三者に見られる」可能性は絶対に排除できないのですが、利便性との天秤と、まさか完全に道理に合わないような使い方はされないだろうという一定の信頼という不文律のもとに多くの人が使っています。
ただこの、不文律的な信頼関係というのが、現代の日本においては非常に危うい。
コロナ禍においてさんざん繰り返された、「お願い」や法の拡大解釈による行動制限を連発する行政と、「お上」からの司令とメディアの煽動にすぐ乗ってしまう大衆。この歪んだ構造がスムーズに動いてしまうのは、信頼関係ではなく思考(思想)停止によるものに他なりません。
信頼とは、一定の常識を共有した上での以心伝心(不文律)で成立するものですが、思考・思想が停止したまま、今や内心活動の一部として機能する事も多い「通信」への介入を安易に許すのは、「貴様、よからぬ〝異心〟を〝電信〟したな〜!」と憲兵がやってくるような、軍靴の音が鳴り響く未来が…(このパロディ、以心伝心でわかるかな…?(笑))
まだ朝日新聞独自の第一報の段階ですが、今後具体化して行ったら、かなり慎重に注目する必要がある案件だと感じています。展開があったら、また記事にしようと思います。